4章、避暑
1、夏ばて
平家との戦の後、たちは京へと帰っていった。
九郎の仕事は忙しくなり、景時も捕虜の護送があるので鎌倉へと呼ばれていった。
ロウは、白龍が望美と一緒にいるようにのそばを離れようとしなかった。
「が思い出してくれて嬉しい」
はロウの記憶についてみんなに話した。
ロウが、狼の姿をしていたことを除いて。
不思議ではあるが、はもしかしたらこちら側の人間だったのかもしれないという話になった。
「それだったら、白龍がちゃんのこと何者かわかるのもうなずけるわね」
まだなぞはいくつか残っているが、それ以上は特に思い出せぬまま夏が来ようとしていた。
「ちゃんはちゃんだよ」
望美にそうは言われたが、は自分がいったい何なのか、望美のように理由があってこの世界にいるのかを知りたいと感じていた。
「ちゃん、またしかられるよ」
そう言われても、熱くて仕方がない。
やっと日がくれ涼しくなってきたとはいえ、暑いことにはかわりはない。
冷たい床にへばりついていることが最近よくあり、それをいろんな人に叱られている。
ロウは、別段気にした風でもなく横に座っている。
「こら、!またそんなところで・・・」
そう九郎に叱られかけたところへ助けの声がかかる。
「こちらは風邪が通る」
敦盛にそんな風にばれたほうへ移動はしたが、今度は座り込んでしまう。
「それでも、暑い・・・」
「ちゃん、これじゃ夏になったらどうなるの。
夏ばて決定だね」
今の暑さでへばっているを見て望美がそんな心配を始めた。
「それじゃ、暑い京を離れればいいんじゃない?」
相変わらずを抜きにして話は進んでいる。
「あぁ、みんなこんなところにいたんだ」
そのとき、鎌倉から帰ってきた景時が話に入ってきた。
「景時・・・おかえり」
は、景時の顔をみるなり、なんとかそれだけ言った。
「ただいま、ちゃん」
景時は、座り込んでいるの頭をワシャワシャと撫でていると、九郎が鎌倉の兄について話し始めた。
そして話はこれからの平家との戦についてに変わっていった。
陸地で勝っていても、海に出ると平家の方が分がある。
そして、熊野が平家がたにつくと、まずいらしい。
「確かに熊野本宮が平家についたこともあるからね」
そして、鎌倉殿も熊野水軍の協力を取り付けてくるように言っていたことで、
一向は熊野へ赴くことになった。
「兄上がそうお考えならば行かねばなるまい」
「避暑の先は熊野だね」
それまでまったく話をしていないに視線が集まる。
「熊野は山深い土地ですよ。少し大変かもしれません
明日からは京を発つ準備で忙しいでしょう。
そろそろ休みませんか」
それは、どう見てもばてきっているを気遣ってのことばだろう。
「そうだね。おやすみ」
そういってその日はおのおの部屋へと散った。
特にコメントできない・・・
もっとがんばれ、私!!
2006.05.22