5、敦盛
は、戦の気持ちの高ぶる兵の間を抜け、浜まで歩いてきた。
まだ、先ほどの怨霊から吸った気がぐるぐると体の中を回っているようでクラクラしているのだが、心配されるのがイヤでみんなの目の届かないところへ行きたかったのだ。
満月はの蒼白になった顔を映し出している。
「こんなところに、人・・・」
人を避けてきたにも関わらず、目の前に人の影が入る。
「グ・・・グギギギ・・・」
矢の刺さったままの鎧を着た怨霊がいた。
しかし、今まで別に襲われたことのないはその場に座ってしまう。
「苦しいのか?けど、私はお前を助けてやれない・・・ごめんな」
そして、その言葉がわかるように怨霊は襲ってはこなかった。
その悲しみ、苦しみがひしひしと伝わってくるが白龍の神子じゃないはなにもしてやれないままだった。
膝をただ抱えて、回る負の気を必死に抑えようとするしかなかった。
「ちゃん!!」
を追いかけてきたのか、望美が歩いてくる。
「ぐ・・・ギギギギ!!」
すると、今まで穏やかにさえ見えた怨霊が動きはじめる。
「望美!」
あわてたは怨霊の気を吸い取り始める。
「ちゃん、大丈夫、封印するね」
そういうと、望美はその怨霊に向かっていき、
「めぐれ天の声、響け地の声。かのものを、封ぜよ!」
そういうと、白い光とともに怨霊は消えた。
「これで、あの怨霊は救われたんだろうか・・・」
ひたいの汗で前髪が顔にまとわりつく。
「望美は強いな。怨霊の苦しみを終わらせることができる」
「あなたは・・・」
いままで気がつかなかったが、もう一人人がいた。
「あの怨霊はどうなったのだ・・・?」
髪を結わえたその人は、のことも見ながら先ほどの怨霊のことを気にしていた。
「封印したんだ」
のどが渇いたまま、かすれた声で答えるとその人は望美のほうをみた。
どうやら、望美は前にこの人に出会ったことがあるらしい。
「私は白龍の神子です」
そういうと、そのひとは納得したようにうなづいた。
「あれを救ったのだな。清く暖かい光があれをつつんでいた」
すると、望美は悲しい顔をした。
「優しくなんてない。斬らなくてはいけないのだから」
「望美・・・」
望美は、優しいから怨霊を斬るのもつらいのだろう。
そのときふと、男性が望美に近づいたとき光が集まった。
「あなたも、八葉・・・」
望美がそうつぶやくと、そのひとは首を振った。
とても、悲しそうに。
「お願いです。私と一緒に戦ってくれませんか?」
「私が、平家だとしてもか?」
「望美は、平家と戦っているんじゃない。怨霊を救うために戦っているんだ」
そう、が口を開くと望美は驚いたようにをみた。
「ただ、帰りたいだけだったのに。変だね」
の言葉を聴いて、その人はいった。
「分かった。平家の悲しみを救える方。私は平敦盛。あなたと共に戦おう」
その声はきっぱりとしていた。
敦盛が仲間になるのは九郎という壁があったが、思ったよりもすんなりと許してくれた。
というより、敦盛の誠意が伝わったからだろうが。
ロウは、の調子がよくないことを心配し、合流した弁慶にすぐに診せた。
「さん、あまり無理はしないでください」
弁慶はそういうが、はきっと今度も無理をするだろう。
悲しい怨霊を少しでも望美が封印しやすくするために。
それを弁慶も分かっているのだろう。
そっと、顔色のよくない顔を撫でた。
すると、それまでなにも言わなかった鈴がチリンと音を立てた。
弁慶さんあんまり出番なかったから出してみた。笑
2006.05.07