6、良薬口に




ちゃん・・・」

目を開けると、心配そうな望美の顔が一番に目に入ってきた。

「望美・・・」

まだ、少し息苦しい気がするがさっきよりずっとましになっていた。

「よかった、目が覚めたんだね」

「あ、あぁ・・・」

そこにいるのはいつもの面々で。
しかし、ふと気がつくと+α見たことのあるが、知らないやつがいた。

「あんた・・・」

「大丈夫〜?まさか、君が白龍の神子の友達だったなんてね〜」

いきなり話しかけられる。

「あ、自己紹介しとかないとね。俺は梶原景時ね。朔の兄だよ」

「え!?」

洗濯なんかしてるから、完全にここで雇われてる人だと思ってた。

「は、はじめまし・・・」

「そんなことより!」

私の言葉を制して朔が話し始める。

「朔〜。そんなことはないんじゃ・・・」

兄上は黙っていてください!」

なるほど。妹の方が強いのか・・・

、大丈夫?」

朔にそういわれて、初めて自分の体の変化に気がついた。

「え!?」

気を失う前までに来ていた服と違う。
こちら側の世界に来たときにきていたセーラー服になっている。

「まさか!」

立ち上がってみると、高校生の視界に戻っている。

「う・・・」

体中が痛い。

「急に動かないほうがいいんじゃない?急に成長したみたいだし」

そういえば、今の痛みは成長期特有の・・・

「戻ってる・・・でもなんで・・・」

「たぶん、力が戻ったんだよ」

「力?」

白龍の心配そうな顔がこちらをむいている。

「そう。の・・・力が。さっきの怨霊の力をたくさん吸ったから」

「吸った!?」

奪うと、吸うとではなんだか違う気がする。

「そう。は怨霊の力を吸ってるよ。自分の力にしてる」

「そんなことできるのか?」

自分でやっているのに変な感じだが。

「うん。は・・・特別だから。特別に生まれたから」

「特別に・・・生まれた・・・?」

「うん。うまく人の言葉にできないけどまれな存在だよ」

「ふーん・・・けど、その力をうまく使えるといいね」

望美はきっと帰るために必死なんだろう。

けど、私は本当に帰りたいのか?
まだ、よく分からない。




私がもう安心だと知ってさっさとみんな薬師の弁慶に追い出されてしまう。

「また、助けてもらってしまったな」

「いいんですよ。君は僕たちを助けてくれてるんですから
今回だって、あの桜に気がついたのは君でしたし・・・」

力の使い方も分からないのに。

「でも、気をつけないといけませんね。怨霊の力を吸いすぎるといけないみたいですし・・・」

「どうやって吸ってるのか分からない以上はどうしようもないじゃねぇか」

「それは、また明日以降考えていくことにして、今日はもう寝てください」

そう言って、薬を出される。

「・・・・・・」

私は薬が嫌いなんだよな・・・

ちらりと薬を見たが、明らかにまずそうだ。
こちらの薬はカプセルなんかに入っているわけ無いので、明らかに飲みにくい。

飲ませてあげましょうか?」

手を一向に出そうとしない私に弁慶が黒いオーラを出し始める。

「あ?」

「それでも、僕はいいですよ」

そう言って、自分の口に運ぼうとしているのをみて、何を言っているのかやっと悟った。

「いい!飲む!!」

あわてて薬を奪い、一気に飲み干す・・・が、

「まず・・・・」

「おりこうさんですね。大人になっても中身はまったく同じですね」

まだ子ども扱いかよ・・・
絶対策に陥れられた。

「もう・・・寝る!」

そう言って、頭から布団をかぶると、くすくすと笑いながら、出て行った。

「薬が飲めないなら、言ってくださいね。いつでも飲ませてあげますよ」

「いらん!」

「おやすみなさい」

そう言って、ふすまの閉まる音がする。

その足音が消えてなくなるころ、そっと「おやすみ」とふてくされたように返事をしてやった。


その日はあのまずい薬のせいか、なつかしい夢を見た。

昔よく見たいやな夢。

田舎の家の前に立っている私。

その視線の先には、去っていく人影。

赤い夕日の中に、ゆれるその影をずっと見ている私。

その夢は、いつも同じところを繰り替えす。