2章 京の花霞


その後、私たちは朔さんの家においてもらうことになった。

服は目立つからと子供用の着物を着ている。
これはなかなかしっくりきている。

ここに来てから私は、できるだけ春日さんといるようにしている。

知らない人だらけだし。

有川君の弟だって、表彰台に上がるのを見たくらいで
知り合いとは言いがたい。

春日さんの近くにいると自然に有川くんもいるけど。

一度一人で散歩に行こうとしたら、策士に見つかって後でこっぴどく怒られた。
しかし、まだその癖はなおっていない。


最近は、桜がたくさん咲くようになった。

ちらちらと散る花はきれいで何時間も見ていたら、
たいてい探しにきた弁慶か、義経にみつかって叱られた。


1、八葉。その役割



「八葉・・・」

そんなものがこの世界にはあるらしい。

そして八葉が守るのが、白龍の神子の春日さんだ。

あの、小さな白龍くんは、実は本当の龍らしい。

春日さんは、かわいいし八葉じゃなくても守ってくれるだろう。

ちゃん!!」

どうやら、話はどんどんすすんで私の話になっていたらしい。

「何?」

突然多くの目にさらされたことに戸惑いながらも返事をする。

これは話をきいてなかったな、と言う顔で春日さんが説明してくれる。

「帰るには、白龍の力をためるしかないらしくて。
その力をためるために私、戦うことにしたの。それで・・・
譲君も手伝ってくれるって。ちゃんも帰りたいよね?」

別にどっちだっていいとはいえないだろう。

「そうだな。じゃあ、私も手伝うよ」

こう見えても私は小さいころからやたら運動神経はよかったし、
祖母の「義務」とかで剣道もやっていた。
それに、私はどうやっているのかは分からないけど、
怨霊の力を奪うことができるみたいだし。

「本当にいいんですか?」

そっと誰にも聞こえないような声で近くにいた弁慶がつぶやいたが、
聞こえないふりをした。

「しかし、それなら九郎を説き伏せないといけませんね」

そう話しかける策士はいつものトーンに戻っている。

それから、みんなで義経と話すために法住寺に行くことになった。