「春日さ・・」
「望美です」
さっきから、名前で呼ぶように言われているが、そう簡単に直るわけもない。
「あ、九郎が帰ってきたみたいですね」
九郎が帰ってきて、みんなで話を始めた。
どうやら、私たちの世界でいう京都、京に向かうらしい。
みんな、誰か仲のよい人がいて、話ができる。
なんか、自分だけ一人のような気がした。
「ちゃん?」
「え?あ、何だ?」
「行こう、もう出発するみたい」
そういう、春日さ・・・望美の横にも、有川がいる。
「うん・・・」
でも、私にいくところがあるわけでもなく、ついていくことにした。
「は静かなんだな」
そう話しかけられてはっきりいって驚いた。
「あ、あぁ・・・」
「もう調子は大丈夫なのか?」
そういえば、意識を手放す前に聞こえた声は、九朗のものだったのかもしれない。
「お前が・・・」
「九郎だ」
さっきもこの会話あった気がする。
「く、九郎が・・・」
「なんだ」
「助けてくれたのか?」
やっと、話をさせてもらった。
「あぁ・・・あんなところに戦に関係のない人が倒れているとは思わなかったから大声を上げてすまなかった」
「い、いや・・・」
やっぱりあれは九郎だったみたいだ。
「ありがとう」
「い、いや!!」
こんな会話をしていると、弁慶がやってきた。
「ふふ・・・二人で真っ赤になって何話してるんですか?」
「「真っ赤になんてなってない!!」」
「ふふふ・・」
思わずはもってしまった。
弁慶は・・・苦手だと思う。
「有川、なんでそんな服着てるんだ?」
ふと思って聞いたことだったが、そういえばと驚いた顔になる。
「こっちに来て目が覚めたときにはもうこうなってたんですよ。
そういえば、さんは制服のままですね」
私は、体に合わなくなった制服を着たまま、歩くしかなかった。
「どっちにしても、そっちの方が暖かそうだ」
とにかく寒い、それがこっちの世界の感想になりそうだ。
「なんで、さんだけ制服のままなんだ?」
「それは、私が呼んだんじゃないからだよ。
神子と後の二人は私の力で服を変えたの」
春日さんの横を歩いていた白龍が言った一言は、なぞを生んだ。
「じゃあ、何でさんはこっちにこれたんだ?」
「私にもわからない・・・ただ、何かは不思議な感じがする」
「それじゃ、よくわからないよ」
白龍が呼んだのは3人だけ。
じゃあ、なぜ自分はこちらにこれたのだろう。
「考えても分からないか・・・なんで私が怨霊の力を奪えるのかもわからないしな」
さっきから、弁慶は近くを歩いている。
私を警戒しているのかもしれない。
「でも、しかたないか・・・」
「見て、譲くん!きれいだね!!」
そんな声につられて、そちらを見るといままで気がつかなかったが
陽が沈むところだった。
「本当ですね。俺たちの世界じゃ、こんなにきれいな夕日みえませんよね」
「・・・・・」
誰も気がついていないだろう。と思っていた。
即座に目をそらしたに。
「どうしたんですか?」
しかし、一人気がついている人物が小さな声で話しかけてきた。
「い、いや・・・なんでもないんだ」
そう、なんでもない。少し、不安だっただけ。
こんなこと久しぶりだった。
「でも、そうは見えませんよ」
心配してくれているのか。それとも・・・
「本当になんでもない」
それから、弁慶を避けるように、夕日を見ないように歩いた。