2、白い世界

「う・・・」
どれくらい時間がたったのか分からないが、目を開けるとそこは、が考えたような場所ではなかった。

「雪?」
そこは、一面雪が積もっていて、自分の上にも雪が積もっている。
ひどく、寒い。

あまりに音のない世界に、

「死んだのか?」

そんな不安がよぎる。

しかし、死後の世界とはこんなに寒い世界なのだろうか。
そんなことを考えていると、また眠気が襲ってくる。

寒いと、人は眠くなるというのは本当らしい。

「そこにいるのは誰だ!!」

そんな声が聞こえたような気がしたが、私はまた意識を失っていた。





また、どのくらい寝ていたのかは分からない。

でも、女性の声で目が覚めた。

「じゃあなんで朔をつれてきたんですか・・・!!」

遠くから聞こえる声はどこかで聞いたような気がした。

「ここは・・・」

急ごしらえの床に布にまみれては寝ていた。

「寒い・・・」

でも、そこでじっとしている気にもなれず、そっとそこをあとにして、声のするほうへ歩いた。

「春日さん!」

「?誰?」

どうやら春日さんは、私のことが分からないらしい。

「春日さん、だ」

そういうと、一緒にいた緑の髪の男の人が口を開いた。

先輩?確かに似てるけど・・・」

「?」

には何を言っているのかは分からないが、とにかく疑われているのは確かだ。

「似ているも何も、本人だ」

「けど、もっとさんは大人ですよ」

春日さんは意味の分からないことを言う。

「どういうい・・・」

「自分の顔を見てください」

緑の髪はそういう。

そう言われて、初めて自分の視界がおかしいことに気がついた。

「ま、まさか!!」

そう言って、近くにあった凍った川に自分の顔を映す。

「なっ!!」

そこに映るのは中学の時の自分。
過去の自分の姿だった。

「なんだ、これ?」

顔を触ると、映った自分も同じ行動をしている。

「子供になってるじゃねーか!!」

「本物みたいだね・・・」

驚いた私の姿を見て、どうやら私が だということを分かってくれたらしい。

「わけが分からん・・・」

さんだけ何で若返ったんでしょう・・・」

そう言い出した緑髪に黒い外套をかぶった人が言う。

「とにかく話は後です。とにかく平等院へ向かいましょう」

そこで初めて、そこにたくさんの人がいることに気がついた。




私は、とにかく状況(といっても今分かっていることだけだが)を説明されながら、
春日さんたちと平等院というところに行くことになった。

さっき調子が悪かったのは寒かったせいらしく、服を貸してもらった今は、大分ましになっていた。
だから、「それでも気をつけてくださいね」と外套の人に言われながらも、歩いていくことになった。

「私は、 

そう自己紹介すると、外套の人も名乗ってくれた。

「僕は、武蔵坊弁慶です」

「弁慶!?」

「それ、先輩と同じ反応ですよ、さん」

しかし、この緑髪はなんで私の名前を知ってるんだ。

「・・・・」

「あ、さん、譲君のことは知ってる?将臣くんの弟で、私のもう一人の幼馴染なんだけど」

「あぁ!」

そういえば、そんな奴いた気がする。

「気がついてなかったんですか・・・」

あきれた顔をされても困る。

私は自慢じゃないが、人の名前と顔を覚えるのはすごく苦手なんだ。

「私は、梶原 朔よ。よろしくね、ちゃん」

「う、うん・・・」

それともうひとつ。私は知らない人とはしゃべるのが苦手だ。
さっきは弁慶に驚いて叫んでしまったが・・・

「あ、朔。さんは、知らない人としゃべるの苦手で・・・」

「そうなの。いいわ。これから仲良くなればいいんだもの」

春日さん、そんなことに気がついてたのか・・・

「さっきいたポニーは?」

極力春日さんに話しかけるように聞いてみる。

さっきはもう一人、オレンジのポニーの人がいたはずだ。

「ぽにぃ?」

「あ、えっと、九朗さんの髪型のことをポニーテールって私たちの世界では言うんですよ」

「まさか・・・」

「義経です」

「ひい!!」

もう頭が破裂しそうです。

自分はいきなり小さくなる。
さらに、井戸に落ちると弁慶やら義経やら・・・・
さらに話を聞いていると、怨霊やら神子やら白龍やら・・・

覚えることはたくさんあるらしい。

「もう俺は少々のことでは驚きませんよ」

確かに。いちいちおどろいていても仕方ないかもしれない。

とは思ったが、本当に怨霊が出たときには、さすがに驚いてしまった。

―キシャアアアァァァ!!―

「うわっ!!何だこれ!?」

いや、ただ、驚きの規模は小さめだったけど。

「怨霊です、さんは下がっていてください!」

いつの間に名前でよんでるんだ、この人。

「わ、分かった・・・」



その後、私はみんなの応援ぐらいしかできなかったがとにかく無事に平等院に着くことができた。

「あんなに怨霊ってよわかったっけ?」

春日さんの一言にみんなが思い起こし始める。

「そういえば・・・なんだか、最初にあったときよりも弱く感じましたね」

がいるからだよ」

「え!?」

その言葉に一番驚いたのは、きっと当の本人だ。

「白龍、どういうこと?」

「うーん・・・うまく人間の言葉にできるかわからないけど、
は、怨霊の力を奪っていたよ?」

そんなつもりはさらさらなかったけど・・・

「そうか・・・それがさんの役目なのかな?」

いつの間にか、春日さんまで下の名前になっている。

「役目・・・」

そういう言葉、苦手なんだけど。