まさか、こんなに霧が深くなるとは思っていなかった。

そんな風に私は思っていた。

少し外に出るだけのつもりが、気がつけば深くなったきりのなかで道に迷ってしまった。

望美の気を追って歩いていたのだが、あいにくと壁にぶち当たり、それを避けようとしているうちにだんだん遠ざかって来てしまった。

「参った・・・」

いつもみんなに出歩くなと言われているのに出歩いてきてしまった自分に少し後悔を覚える。

真っ暗で霧にまかれて少しずつ怖くなってくる。

もしかしてこのままみんなのところに帰れなくなったらどうしよう。

心細くて、でもそれ以上歩く気になれなくてその場に座り込む。

虫の声もなくて、この世に自分ひとりしかいないような錯覚さえ覚える。

そのとき、ぱきっという音が静けさを破った。

「だれだ!?」

心細くなっているので人には会いたいのだが怖いのは怖い。

「私だ。このようなところまで来てどうした・・・」

敦盛が最後まで言い終わるまでに、安心した私は敦盛の手を握ってしまった。

「敦盛。怖かったんだ」

そう言ってぎゅっと握る手は自分の手より冷たい。

それでも、知っている誰かに会えたことがうれしくて、その手を離す気にはとてもなれない。

「私は穢れている・・・手を離し・・・」

「離したくない」

そう言って、さらに手を強く握る。

「道に迷ったんだ、敦盛。すごく怖くて・・・」

「しかし・・・」

さらに何か言おうとするが真が手を離す気配はないと思ったのか、あきらめたようだ。

「連れて帰って」

そういうと、敦盛は困ったような顔をしながら引っ張って言ってくれた。

「敦盛が迎えに来てくれて、よかった」

そうつぶやいたのはこの距離では聞こえたはずなのに敦盛は何も答えなかった。

だが、その頬を見れば返事は聞こえたようなものだった。




いちゃいちゃしてろ。