金
最近よく金と白龍の神子の友人の娘が歩いているのを見る。
屋敷の仲間では入ってこないが、金が外に出て行くときはよく会っているようだ。
というより、娘の方が金をせっせと追いかけているようである。
金が走ったら走り、細い道に入れば入り。
しかし、金の方も娘が入れないようなところには入らないようだ。
「金、またな」
いつも門の前まで来ると娘は金を少し撫でて帰っていく。
「待て」
なぜか興味がわいて娘に声をかけた。
すると娘は素直に立ち止まる。
金もこちらを向いている。
どうやら、二人とも自分に声を掛けられたと思っているようだ。
「お前、名前は?」
「・・・・・・です」
さっき金に話しかけていたよりも小さな声で返事があった。
「・・・そうか」
自分でも何を話そうなんて思っていたのか分からない。
会話が進むわけもない。
「!」
そこに、なかから九郎が出てきた。
「泰衡殿・・・が何か迷惑おかけしていないか?」
出会ったすぐにそんなことを言われてと名乗った女は不機嫌そうな顔になる。
「九郎、私そんな迷惑ばかりかけてるみたいに言われる筋合い・・・」
「あるだろう」
なぜかこの二人の会話にいらいらとして、
「用が終わったなら帰れ」
と、九郎に向かっていった。
「すまん。行くぞ、。それでは失礼する」
「・・・」
はまだ不機嫌なままだが素直に九郎の背中を追おうとしている。
しかし、最後に振り向いて
「金とまた遊んでもいいだろう?」
と、不安げに聞いてきた。
「・・・いいだろう」
いつもなら、こんな返事はしないがなぜか今日はそういいたくなった。
「ありがとう、失礼する」
九郎のまねをしてそう言って、は少し向こうでまっている九郎に向かって走っていく。
二人が見えなくなったころ、
「お前も、面白そうなのをつれてくるな」
そう、金につぶやいた。