ある日の昼下がり、は縁側で寝転がって日向ぼっこをしていた。
ひどく和やかな日で、うとうととさえしているところに
ひらひらが目に入る。
「!!行儀が悪い!!!」
九郎の一言が、聞こえた瞬間周りにいたものはそそくさと出て行く。
弁慶以外。(一種の楽しみらしい)
「・・・・・・九郎、うるさい」
せっかくうとうとしてるんだから頬って置いてほしい。
しかし、さっきまでちゃんと縁側によっこらしょと座っていたけど、眠くなったのでそのまま倒れている姿は九郎には許せないだろう。
「このようなところで寝るな!!」
ひらひらが目の前でひらひら・・・
「あんたはどっかの母さんか・・・」
もう反応する力もない。
「お前の母親になんてなりたくない!」
そんな大きな声出さなくても聞こえるよ。
「弁慶、嫁の教育がなってないよ」
「おや、それはすみません。まだ修行中ですからね、九郎」
「弁慶乗るな!!」
平和〜
「ほら、起きろ!!」
じゃねー!!
何普通に起こそうとしてんだ!
「触るなH!」
分からないの承知でカタカナ(英語?)攻撃だ。
「えち?とはなんだ?」
「うるさいひらひら!!目の前でひらひらひらひら!!」
「ひらひらとはなんだ!!」
エプロンつけおって・・・
「この袖がひらひらひらひら・・・・・・!!」
そうとう気になるんだ、このフリル。
「あぁ、猫ですからね。は。
そういうものに飛びつきたくなるんですよね」
「ヲイ!私は猫じゃない!!」
猫猫猫猫猫扱いしやがって!!
「見ろ!!敦盛なんて屋根の上だぞ!よっぽど猫っぽいじゃないか!」
縁側からさっと降りて屋根の上を指差す。
「敦盛!危ないぞ、降りて来い!」
こんどは敦盛かよ!!!
「この姑め!!」
今度は姑呼ばわりしてみる。
「もう、素直にここ座ってろ!!」
そう言って無理やり縁側に座らせようとするが、
びくともしない。
「何をしているんだ?」
この訓練馬鹿め・・・
「九郎、さんは、そこに座ってほしいみたいですよ」
弁慶はほほえましそうに見ているがこっちは必死なんだ。
「駄目だ、俺はいそがしいんだ」
「姑め・・・侮りがたし」
そういって、また転がろうとすると九朗に腕をつかまれた。
「そんなに暇なら少し手伝え」
「は!?」
確かに、暇だ。だが、なぜ九朗の手伝いなんて・・・
「ちゃんとできたら京菓子をやろう」
「京菓子!?のった!」
お菓子なんてめったに食べられん!
「よし、じゃあ、ここを拭いておけよ」
「ここ!?」
こ、この廊下のことですか?
「そうだ。じゃあ、俺は仕事を済ませてくるからそのうちにやっておけよ」
目の前に広がるながーーーーーーい廊下。
これを拭くのか。
「ちょっとやそっとじゃお菓子は手に入らないか・・・」
−夕刻
「、遅くなったな」
そう言って九郎がやっと顔を出したが、部屋にはいない。
「?まだ終わってないのか?」
そう思って廊下に行くと、きれいに拭き終わった廊下で、
弁慶が抱き上げているときにちょうど出会った。
「寝てしまったのか?」
そう声をかけると、弁慶にしーっと言われる。
「さっき寝たばっかりなんです。部屋に連れて行っておきますよ」
「まったく仕方のない奴だな。菓子は明日だな」
「九郎も、かわいそうなことをしますね。部屋の扉を開けてくださいね。
手がふさがってますから」
「分かった」
そんな会話をこそこそ言いながら部屋に歩いていく。
「訓練になるだろう。弁慶はずっと見ていたのか?」
「ふふ・・・なかなか勤勉でしたよ」
そっと部屋に寝かすと、は少し疲れた顔をしているのに気がついた。
「すこし、きつかったか?」
「きっと明日になったらけろっとしてますよ。
さぁ九朗、女性の床にいつまでもいてはいけませんね」
そういうと九郎は真っ赤になって非難する。
「そ、そんなつもりはない!弁慶行くぞ」
「はいはい。おやすみなさい、さん」
そういって二人でそっと部屋をでる。
そとは、きれいな茜色で。
ただ、の寝息が聞こえてくるだけだった。