まどろみのなか、誰かが背中に手を回してくる。

「白龍・・・やめて・・・」

こんなことをするのは寝ぼけている白龍くらいだろう
もう一度夢のなかに帰ってしまいたいのを我慢してはつぶやいて
その腕を押しのけようとつかむ。

それでも、その手は、着物の上から背中をなでるように動いている。

「へぇ、これがの玉(ぎょく)?


「あ゛ぁ?」

突然、思っていた人物と違った人間の声に驚いてまどろみの世界から
一気に現実世界へと戻ってきてしまった。

目の前に広がるのは・・・
赤い髪・・・

「な、何してんだ!!!」

第一声はとにかくこうである。

「え?」

まるでそれがごく当たり前のことであるように
布団の上からとはいえ抱きついているやつ。

上着が向こうに脱ぎ捨てられているのが見える。

「起こして来いって言われたけど、あんまり
きもちよさそうに寝てるからかわいそうかなっておもってね」

思ってねじゃない!!

言の葉には出していないが、顔に出ていたんだろう
ヒノエの顔がうれしそうにゆがんだ。

「セクハラだ!!出て行け!!!!!!」

そう言って布団の中から追い出そうとするが、
背中に回されたてがそれを許してくれない。

「せくはら?」

そこに突っ込んでる場合じゃないんだ!!

「望美!!朔!!」

そう叫んだところでふすまが開いた。

そこにたっていたのは・・・

「・・・・」

自分の顔の筋肉が引きつっているのがわかる。

「おや、悲鳴がするとおもったら・・・
ヒノエ、またあなたですか」

黒い袈裟が朝の日の光をバックに入ってきた。

心の中で、もうこいつでもいいというあきらめが混ざった。

「た、助けてください」

にこりと笑うその顔は

明らかに弁慶の笑顔は、

『僕の助力は高額ですよ』

と見える。

しかし、いまこの状態を助け出せるのは・・・
弁慶だけなんだ。

「ヒノエ、さんがいやだって言ってますよ」

そう言って布団を剥ぐ。

「寒・・・」

布団から出たいとは言ってないのに・・・

「ちぇ・・・」

そうヒノエはつぶやいて仕方なく離れていった。

「あ、ありがとう・・・」

布団を剥いでくれてな!!!

そっと、弁慶の手から布団を取り返そうとしたら、
弁慶の笑顔が深くなる。

「・・・・駄目ですよ。
それとも、僕もご一緒しましょうか?」

また顔の筋肉が引きつる。

「い、いい・・・」

「それと、さん・・・
僕としてはうれしいんですが、着物はちゃんと合わせてください」

「え?」

しかし、にはそんな言葉通じないようだ。
仕方なく弁慶が寝乱れた寝巻きをなおしてやる。

「女の子なんですから、ちゃんとしておかないと赤い虫が寄ってきますよ」

「赤い虫?」

「ほんといやなやつだよな、あんたって・・・」

は何を言っているのかわからないという顔だ。

「おや、僕はこのままじゃさんが困るとおもって
言ってさし上げたんですが・・・」

何が困るんだ。
だが、あんたの言い方がいやなんだ・・・

「さて、さん、目はさめましたね。
じゃ、僕たちは先に行ってますね」

そこで僕たちと表現するところが弁慶らしい。

「あんたと一緒になんて行かないぜ」

そういってヒノエはさっさと部屋を出て行く。

「じゃ、また後で:




あの二人、どうしてこんなに毎日いろんな起こし方ができるんだ・・・・


おまけ

「なぁ、姫君。セクハラってなんだ?」

と望美に聞いたヒノエが現代組に白い目で

「どんな起こし方だったの?」
「どんな起こし方をしたんですか?」

と、仲良く声を合わせて聞かれたことを特記しておく。

ちなみに、弁慶はその横で他人面をしていたらしい・・・