うそつき


「ベンケー」

少し用事があって呼びに来たのだが、返事が無い。

扉は開いたままだったので部屋をのぞいてみると、弁慶は眠っているようだった。

「・・・・・」

何もかぶらず、机に突っ伏すようにして寝ている弁慶は近づいても起きる気配は無い。
気がする。

何か掛けるものを探したが、何しろ人の部屋だ。
どこになにがあるかも分からない。

だから、自分の着ていた一番上の着物を掛けることにした。

それを掛けると、ふと弁慶の寝顔なんてめったに見えるもんじゃないと思いついた。
つまり見ておかないと損だろう。

そう思って顔を覗き込んだ瞬間、

「んむっ・・・・・」

つかまった。盛大につかまった。

しかも、頭をつかまれて口付けつきだ。

いきなりのびてきた手に捕まり、引き寄せられたんだ。

「んーーーー!!!!」

思いっきり向こうに押して初めて開放してもらった。

「何すんだ!!!」

思い切り講義の声を上げるが、弁慶が気にすることは無い。
微笑んだままだ。

「人の寝顔を見ようなんてするからですよ」

「狸寝入りなんて汚いぞ!」

きっと、最初から気がついていたんだ。

「優しい君にお礼がしたくて」

そう言って、さっき掛けた上着を着せてくれる。

「恩をあだで返すな!」

「おや、あだで返した覚えは無いんですけど。
ちゃんと、感謝の気持ちが表現できてませんでしたか?」

そう言って、またのびてきた手に不安を覚えた私は、さっと避ける。

「もういい!!!!」

「君がよくても僕の気がすみませんよ」



ちゃん?」

そこに現れたのは、景時だ。

これは神様の助け舟だろう、そう思って景時の影に隠れる。

「おや、妬けますね。景時、返してください」

景時が隠したわけでもないのにそういう弁慶。

「え!?あ、あの・・・・」

景時は話が読めず、こまりはてている様子。

「返さなくていい!行くぞ」

そう言って、景時を引っ張ってその場を後にした。

「え?え?」



今日散歩に行ったときにたまたまあった薬草を摘んできたのだが、それを渡していないのは後で気がついたことだ。


「もう、弁慶の寝顔を見ようなんて思わないでおこう・・・」

そうこっそり心に誓っただった。



甘い・・・あますぎる。
これ、誰が書いたんですか?笑

2006.03.08