うぐいす




弁慶と目があったと思ったら、すぐに別の方向へと早足に歩いていってしまった

「どうしたんでしょう・・・」

避けられる心当たりなんて今のところない。

「嫌われたんじゃないか?」

そうはっきり言うのはつぶやいた人物の甥っこ。

「ヒノエ」

しかるように言っているが、ヒノエは答えた風でもない。

「ま、今のうちに近づこう」

そう言って、を追いかけていってしまう。



しばらくして、ヒノエがすごく不満そうな顔で帰ってきた。

「どうしたんですか?」

「なんでもないさ」

顔はなんでもない顔ではなかったが、弁慶は何も言わないことにした。

「とにかく、どうにかしなくてはいけませんね」

の後姿を思い出し、そうつぶやくと弁慶は動き始めた。



夜。

さん、入ってもいいですか?」

灯りがついているのに、の返事はない。

「入りますよ」

「だ、ダメだ!」

入ると脅して初めて返事があったが、それは拒絶の言葉。

「なぜです?」

「い、今は・・・」

なかでごそごそと音がする。

「入りま・・・」

「はいりますよ」と言いながらそっと戸を開けると、着物の帯を必死に締めているの目と弁慶の目があった。

「べ、弁慶ぃ!!!!」

怒った様子のに、すみませんと笑いながら返して、一度とを閉めた。

さすがのも、恥ずかしかったらしくっ赤にした顔のままさっさと帯を締めた。

「もう、いいですか?」

着物が着替えれたようすなのに入ってもいい許可が出ないままの弁慶は仕方なく声をかける。

「・・・・・・・・・・・いいぞ」

しばらくの沈黙のあと、やっとお許しが出た。

中に入ると、は部屋にちょこんと座っていた。

「弁慶、どうしたんだ。こんな夜に・・・」

こんな夜といっても陽はくれたばかりで、先ほど夕餉からわかれたばかりだ。

「すみません、聞きたいことがあったもので」

不自然にあわさない目を気にしながらも弁慶は部屋に入っての前に座った。

「聞きたいこと?」

「分かっていますね?」

そう、言えばやっとの目が弁慶に向く。

「・・・・・・・わから」

「分かっているでしょう」

分からないふりをしようとするを弁慶は許さない。

「何か僕が悪いことをしたなら謝ります。
けど、理由を言ってくれないと僕は分からない」

そういうと、は困ったような顔になった。

「言ってください」

そう促すとやっと口を開いた。

「望美から、弁慶はうぐいすとか小鳥が好きだってきいたから・・・」

「すきですがそれがどうかしましたか?」

そんな話をそういえばしたことがある。

「私のこと、いつも猫みたいだっていうだろう?
だから、猫は小鳥を殺すときがあるから、私のことは嫌いだって言ってるのかと思って。
だったら、あったら不快だろう?」

そういいながらどんどん顔がうつむいていく。

「そんなこと、考えてたんですか・・・」

あきれたようにつぶやくとは小さくうなずいた。

「僕は、猫が嫌いだなんていってませんよ」

そう言って、うつむいてしまった頭を優しく撫でる。

「僕は、この猫はだいすきです。
だから、逃げないでください」

そういうと、はまだ疑ったような目をこちらに向ける。

「ほんとにか?」

「本当です」

そういうと、猫のように擦り寄ってくる。

「よかった」

は小さくそうつぶやいた。



やばい、めっちゃ恥ずかしい!!!!!
いちゃつくなーーーーー!!

こんな時間に行くのは当時非常識だったのでしょうか?
とかいう突っ込みはなしで。

2006.04.06