数日間、梶原家で過ごした。

ここは、居心地が悪い。

さん、ちょっと用事があるから待っててね!」

そう言って春日さんはすぐにどこかへ行ってしまう。

私は前より一人でいる時間が長くなった。

前は、ここに弁慶が来ているとき意外はずっと弁慶についていってたから。



ここには、私の知ってるものはない。

前もなかったけど、大分慣れてきたところだった。

そっと庭に出て、日向ぼっこしていても、落ち着かない。

「望美・・・じゃないのか。
オイ、望美を知らないか」

弁慶のところにいたときにも来た、九朗とかいうやつだ。

とにかくひらひらしてる。

「知らない。用事があるって出て行った」

そういうと、そうか、と言って帰るのかと思ったらよってくる。

「何?」

「弁慶のところはいやだったのか?」

そんなこと、分からない。

「俺は、お前がいたいのだと思っていたから
おいてるのかと思ってたのに、違ったんだな。」

そんなこと分からない。

ただ、弁慶も兄上と同じ。

迎えに来てはくれないんだ。




「猫ちゃん」

そっと夜中にそうつぶやく声が聞こえた。

「弁慶」

そっと扉を開けると、暗闇のなかに黒い外套が月明かりに照らされてたっていた。

「迎えに来ました」

そう言ってくれた。

「うん」

そう言って、履物も履かずに弁慶の所へ行く。

「よく考えたんですけど、やっぱり迎えに来ました」

「うん」

そっと靴を持ってきてくれたので、それをはいた。

「明日、望美さんたちには話しましょう」

「うん」

ただ、弁慶は迎えに来てくれたことがうれしくて、
弁慶が歩いていくほうについていった。

「弁慶!」

ちょうど門から出ようとしたとき、景時に会った。

「おや、景時・・・どうかしましたか?」

「困るよ〜、朔に叱られちゃうよ〜」

どうやら、私を勝手に連れ出すと朔に叱られるらしい。

「大丈夫ですよ、この子も行きたいんですから」

「けど、勝手に出て行かれたら・・・」

「今、景時が知ってるんだから大丈夫でしょう?」

そう言って私の手を取って、さっさと出て行く。

「景時、あわててましたね」

「うん。寒くないのかな?」

「ふふふ・・・どうでしょうね?」



私は、ただ、幸せだった。

もう、寂しくない。












行きつくとこ一緒ですし。笑